飛べない紙飛行機

CAST林 芽亜里林 芽亜里

作者:ひぐち。

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2021.10.01

私の名前は林芽亜里。





今、私は
真っ白い部屋の
真ん中にいる。







「・・・なんだ、スズメ」





窓がカタッと
鳴ったように
聞こえても、





本当はただ小鳥が
遊んでいるだけ。





ひっそりとした
個室の病室は、





点滴の液が落ちる音しか
しなかった。







余命1ヶ月。







私に残された時間は
あまりにも短くて、





いまだに信じることが
できないでいる。





このまま苦しまずに
残りを生きて、





楽に死ぬことが
できればそれでいい。





そう思っていた。







あの日、
彼に会うまでは。













*——*——*





「何作ってるの?」





「すっげぇ飛ぶ
紙飛行機!」





まだなんとか車イスで
外に出ていた頃、





毎日必ず会う
同い年の男の子がいた。





彼の名前は義斗くん。





義斗くんは大ケガで
入院してきたそうで、
よく病室を脱走する
常習犯として有名だった。





「紙飛行機・・・、
どうしてわざわざ?」





「じゃあさ、飛ばしに
行ってみる?」





まだ引きずるようにしている
左足もフルに使いこなし、
彼は私を病院の屋上へ
連れていってくれた。





「・・・キレイ」





「だろ?
意外と景色いいよな、
ここ」





私の学校もマンションも、
全部見える。





今までは辛くて
見られなかった風景が、
彼とならなぜか
眺めることができた。





「ほら、芽亜里ちゃんの
飛行機」





「・・・ありがと」





てっきりそのまま
飛ばすのかと思ったけど、
彼はポケットから
ペンを取り出した。





飛行機の羽の先に
何かを書きつけている
彼の表情は
私には見えなくて、
何を書いてるのか
とっても気になってしまう。





義斗くんが
ペンのキャップを
閉めたところで、
私は聞いてみた。





「何書いてるの?」





「願い事。
芽亜里も書きなよ!
高く飛ばせば
叶うかもしれないだろ?」





そう言われて
ペンを差し出される。





素直に
それを受け取って、





羽の裏側に
短い文を書きつけた。





「なんて書いた?」





「教えな~い」





「芽亜里のケチ!」





彼が車イスを
フェンスのぎりぎりまで
押してくれて、
見える景色が
さらに広がる。





空は絵の具で
塗りつぶしたように真っ青で、
少しだけ風も吹いていて。





「紙飛行機日和だな」





「そうだね」





「よっし、せーので
飛ばすぞ!」





「うん!」





「「せーの!!」」





真っ白な
紙飛行機は、





青い空の中を
遠くまで進んでいく。





義斗特製の紙飛行機は
本当にすごくて、





どこまでもどこまでも
飛んでいくんだ。





「お願い叶うかなぁ」





「叶うだろ、絶対」





病室まで
送っていってもらい、





ママからの
お土産のお菓子を
2人で食べる。





これが毎日のように
続いていた。





私の意識がなくなる
その日まで、ずっと。













*——*——*





Boy’s Side・・・





屋上のドアを開けて、





誰もいない空間へ
足を踏み入れる。





夜の屋上は
当たり前だけど
真っ暗で、





青くない空には
星が光っていた。





いつもなら
隣にいるはずの彼女は
眠ったまま、
今日は久しぶりに
1人きりだ。





持って来た紙飛行機を、





屋上の1番
高いところから
真っすぐ飛ばした。





ひときわ
強い風が吹く。





暗いから
紙飛行機の陰も
見えなくて、





無事に
飛んだかどうかすら
分からない。





「・・・頼む」





“芽亜里が、
目を覚ましますように”





それさえ
叶えてくれるなら、





俺にはもう
何も与えてくれなくて
いいから。





もう1度だけ、
1度だけでいい。





彼女が笑うところを
見たかった。











  ・ ・ ・







そんな願いは
届くはずもなく、





紙飛行機を
飛ばした翌朝に
彼女は眠りについた。





彼女が紙飛行機に
書いた願いが
どんなだったのか、
俺は全く知らない。





ただ、1つでも
叶っていることを
願うばかりだった。





「あ、義斗くん。
ちょうどよかった、これ」





「・・・紙飛行機?」





手のひらに
収まるほどの
小さな紙飛行機。





芽亜里、
こんなちっちゃい飛行機じゃ
上手く飛ばないよ。





苦笑いをして
それを眺めると、





羽の裏側に
何かが書いてあった。





“大好きです”













*——*——*





身軽な
紙飛行機に
なりたい。





でも、君から
離れたくないの。





だから
思いついたんだ。





飛べない飛行機になれば
いいんだって。





そうすれば、





君は私を
飛ばさないで
いてくれるでしょ?











  ・ ・ ・









“芽亜里の病気が
治りますように”











“義斗のケガが
完治しますように”











“ずっと、一緒に
いられますように”













*end*

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