彼女はずっと輝いていた。

CAST戸部 光翔戸部 光翔

作者:ちはなん

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2021.08.08

「コウちゃん、
絶対また会おうね」





「うん、約束」





俺の初恋の子は、
天使のような笑顔で
俺の手を握った。







***





5月。
高2になった俺は、
ある学校に転校してきた。





普通は4月が
多いんだろうけど、
家がなかなか見つからず、
こんな中途半端な時期になった。





「戸部光翔です。
よろしくお願いします」





軽く一礼して顔を上げると、
どこからか、
鋭い視線を感じた。





驚いてみたけど、
そこには、
耳にピアスをはめて
爪を見ている
ヤンキー系女子が
いるだけだった。





・・・ヤンキーっぽい人、
俺苦手なんだよなー。





先生「戸部は、あそこに
座ってくれ」





先生が指さした先には・・・
不機嫌そうに
眉をひそめた
あのヤンキー系女子がいた。





まじかよ、
あのとなり・・・





光翔「よ、よろしく
お願いします・・・」





頑張って笑顔を
作りながらいうと、
彼女はしばらく俺をみた後、
フイと顔を背けた。





・・・俺、こんなんで
大丈夫なのか?













***





放課後。





俺は、早速
道に迷っていた。





駅からは出たものの、
どうやって家に帰るか、
全く分からない。





スマホの地図を
見ながら歩く。





そして俺は、
薄暗い路地の前に
たどり着いた。





光翔「え・・・、
ここ通んのかよ・・・」





俺は恐る恐る入った。





そんな汚いわけではないし・・・
さっさと抜ければ、
大丈夫・・・か・・・





?「おい、おまえ・・・」





大丈夫じゃなかったー!!





突然強い力で
肩を掴まれた。





見ると、
うちの高校の制服を着た
男子が3人。





全員、かなり
ヤンキー感が漂ってる。
やっべえ・・・





「お前、なにのこのこ
歩いてんの?
ここ、勝手に通っていいって
書いてたか?」





いや、ここ
私道じゃないし・・・





「ああっ? おい、
返事とかできねえのかよ」





うっわヤバ・・・
キレかけてんじゃん。





一応、名前見とこ・・・





「野口」か。





よし、最悪先生に
言ってやろう。





「おいおい、
全スルーかよ。
殴られてえのか、
てめえ!」





「野口」が、
手を思いっきり
振り上げる。





痛そう・・・って
言ってる場合じゃねえ!!





慌てて
背中を向けると・・・





?「ヨシト!」





女子の声が聞こえ、
これからくるはずの
衝撃がなくなった。





声の方を見ると、
朝のヤンキー女子が
立っていた。





ヨシト「く、クルミさん!」





クルミ・・・
懐かしい響きに、
思わず昔のことを
思い出した。



















あれは小一の時。





俺は転校することになった。





家が隣で、2歳ぐらいの時から
ずっと遊んでいた池未来実は、
俺と別れるまで
ずっと泣いていた。





車に乗る直前、くるみは、
俺に言ってきた。





くるみ「ねえ、
コウちゃん、
絶対会おうね!」





泣きながらも、
頑張って笑って。





コウショウ「うん、約束!」





俺たちは、そう言って、
守れるわけない
約束をした。





くるみは、
誰もが目をみはるほど
可愛くて、
『清楚』という言葉が
よく似合っていて、
笑顔もとにかく可愛かった。





・・・俺が、恋に
落ちてしまうぐらいに。





引っ越してからは、
連絡もとってないし、
会ってない。





今、どうしてるんだろう・・・



















いや、こんなヤンキーが
あのくるみな訳ない。





そんなすっごい
珍しい名前じゃないし。
名前が同じだけだっ!





ヤンキー女子は、
「ヨシト」と呼ばれた男子の元に
ツカツカと歩み寄り、
はあ、とため息をついた。





クルミ「こんな人目のあるとこで
何やってんだよ。
バレたら即退学なの
わかってんの?」





ヨシト「す、すんません。
でも、こいつ・・・」





クルミ「あーもー、
うるっさいな!」





ヤンキー女子は
ヨシトの言葉を
さえぎって言うと、
今度は俺の方に歩いてくる。





え、何・・・?





クルミ「ちょっときて」





いきなり手首を掴まれ、
引っ張られる。





光翔「え・・・ちょっ・・・」





半ば強引に
連れてこられたのは、
小さな公園。





遊んでいる子供も
いない。





ヤンキー女子は、
木の陰のところに行くと、
やっと俺の手を離した。





光翔「え、えっと・・・」





クルミ「アイツが、
変なことしてごめん」





いきなり謝られた。
意外に律儀なのか・・・?





クルミ「怪我とか、してない・・・?
って、腕!
ヨシトのやつ・・・
あんだけ気をつけろって
言ったのに・・・!
アイツにされたんでしょ?
腕、擦りむいてるけど・・・」





めっちゃ
心配してくれるじゃん。





そう思いながら腕を見ると、
たしかに擦りむいていた。





クルミ「そこ、座って」





ヤンキー女子は、
すぐ近くにあった
ベンチを指さす。





光翔「は、はあ・・・」





とりあえず座ると、
ヤンキー女子も隣に座り、
俺の腕を掴んだ。





何をされるのかと思ったけど、
ポケットからハンカチと
絆創膏を出した。





クルミ「ごめん、
やっぱり立って。
傷口、洗わなきゃ」





次は蛇口のところに
連れて行かれた。





光翔「いった・・・」





クルミ「動かないで!
痛くても我慢して!」





んなこと言われても・・・





痛さに耐えて、
やっと洗い終わると、
またベンチに戻った。





しばらく沈黙が続く。





クルミ「・・・あ、あの・・・」





光翔「あ、あのさ・・・」





言葉が被って、
また沈黙。





待って、
まじで気まずい。





光翔「あ、ありがとう!
お、俺、帰るね・・・」





そう言って立ち上がり、
公園を出ようとすると・・・





クルミ「ま、待って!」





驚いて振り返ると、
ヤンキー女子が
髪を風になびかせながら
走ってくる。





・・・まるで、
『くるみ』みたいに。





クルミ「待ってよ、
『コウちゃん』!」





ヤンキー女子は、
立ち止まって
そう叫んだ。





え、なんでその、
名前を・・・





光翔「コウちゃんって・・・
まさか、くるみ・・・?」





いや、でも、くるみは
こんな感じじゃなくて・・・
もっと・・・





ヤンキー女子は、
泣きそうな顔で、
小さく頷いた。





嘘だろ・・・、
そんな・・・





光翔「で、でも・・・
くるみは・・・」





クルミ「私は、コウちゃんが
引っ越してから、
孤立した」





ヤンキー女子・・・・
くるみは、
静かな声でそう言った。





光翔「え・・・?」





クルミ「知らなかった?
私は、コウちゃんがいたから
人気があった。
コウちゃんと一緒だから、
みんなが集まった。
みんな、私と仲良くしていれば
コウちゃんと仲良くなれるって
思ってた。
だから、裏では
悪口も言われてたし」





くるみが淡々と
告げた事実が、
全く頭に入ってこない。





クルミ「だからね、
自分を守ろうって
必死になってたら、
だんだんきつい性格に
なっていって・・・
仲良くしてくれてた子も、
みんなどこかにいっちゃった。
そんな時、さっきのヨシト達に
会ったんだよ。
彼らは、私を心から尊敬してくれた。
初めて、自分の居場所が出来たな、
って思った。
でも、どこかで道を
間違えたんだろうね、
こんな奴になっちゃった。
笑っちゃうでしょ?」





泣きそうだった。
まさか、くるみが
そんな思いをしてたとは。





光翔「ごめん・・・、
ずっと、
一緒にいられなくて・・・」





違う、俺が伝えたいのは
そういうことじゃない。





光翔「ごめん・・・、
ずっと守って
あげられなくて・・・」





いや、本当に
言いたいのは・・・





光翔「好きだ、くるみ」





クルミ「えっ・・・?」





光翔「初恋、だった。
ずっと、13年間・・・」





クルミ「長っ!!
・・・ふ、あはは、
あはははははっ!」





いきなり腹を抱えて
笑い出した。





クルミ「13年って・・・」





光翔「なっ!!
そこは、
聞かなかったことに・・・!!」





クルミ「・・・私もなんだけどね」





え・・・?





光翔「え、今なんつった?」





クルミ「はあ?
2度も言うわけないじゃん、
バカ!!」





顔を真っ赤にして
叫んだ。





でもそのあと、
またにっこりと笑った。





・・・俺の、大好きな笑顔で。





くるみは、
昔のくるみとは違うけど、
彼女の輝きは消えてなかった。





俺はもう一度、
彼女に言った。





光翔「大好きだよ、
くるみ」







*END*

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