救い、救われ
作者:9つの目玉焼き
ベランダに立ち、
落下防止用の柵を
乗り越えようとした。
コウショウ「・・・さよなら・・・」
呟く声が
夜風に運ばれて、
暗闇の空に散る。
もう、悔いはない、
はずだったのに。
つけっぱなしのラジオから
流れてきたのは、
初めて耳にする曲。
透き通るような歌声は、
僕の固く閉ざされた心を
優しく解かしてくれた。
コウショウ「なんで・・・
こんな時に・・・」
死ぬのが・・・
急に怖くなった。
部屋へと戻り、
布団に潜り込んだ途端、
思わず涙が出た。
あの日から、
3年の月日が
流れようとしている。
僕は、また逢えるだろうか。
あの歌声に。
マナ「はじめまして。
今日からこの学級で
お世話になります、
安村マナです。
よろしくお願いします」
僕の学級に、芸能人が
転校してきた。
らしい。
休み時間になると、
安村さんの周りを
多くの男子が囲んだ。
それを遠巻きに見る
女子達の視線は、冷たい。
僕はというと、
ただいつものように
窓際の席で読書をしていた。
芸能人など興味がない。
知らない。
戸部コウショウ、
中学3年生。
どこにでもいるような、
平凡で普通すぎる
男子中学生だ。
他の人と唯一
違うところといったら・・・
過去に一度だけ、
自分の意思で
生涯を終えようとしたこと。
僕を必要としてくれる人は、
多分いない。
今消えたって、
誰も悲しむ人は
いないかもしれない。
そんな自己嫌悪に
陥っていると、
何やら教室が
騒がしくなっていた。
アンナ「男子って本当何なの。
芸能人だからって
よってたかって
馬鹿みたい」
クラスのリーダー的存在の
白井アンナが、
男子達を睨みつける。
・・・いや、僕には
その男子達の中心にいる
安村さんを睨んでいるようにも
見えたけれど。
「いいじゃん、
マナちゃんだって
この学校初めてだし、
色々教えてあげたほうが
いいだろ?」
「そうだよ。白井だって、
話したかったら
来ればいいのに」
アンナ「はあっ?」
ヨシト「ほらほら、落ち着け。
安村さん困ってるだろ?」
皆をなだめたのは、
野口ヨシト。
顔立ちが大人っぽく、
運動も出来るから、
学校中の女子達の心を
奪っている。
別に羨ましくはないけど。
ヨシト「安村さん、大丈夫?
良かったら俺が
学校を案内して・・・」
マナ「結構です。
そのうち覚えられるから」
安村さんの反応は
意外だった。
ツンっとあごを上げて、
スタスタと教室を出て行く。
「何、あいつ・・・
調子乗ってんの?」
クラスの女子達が
ざわめく。
「野口でダメなら、
俺達もう終わったな・・・」
クラスの男子達が
落胆する。
安村マナ、
彼女の転入によって、
波乱の展開となりそうだ。
*・*・・・*・・・*・*
昼休み、僕は図書館で
本を探していた。
廊下から、何やら
声が聞こえてきた。
アンナ「安村さん、
なんでそんなに冷たい態度
とるわけ?」
マナ「別に・・・
そういう性格なんだから、
仕方がないんじゃない?」
「なんで上から目線なの。
やな感じ」
「うちらのこと、
バカにしてるよね?」
安村さんと白井達が、
もめているらしかった。
マナ「バカにしてるのは
そっちじゃない?」
アンナ「・・・ふざけないでよ!」
僕は、咄嗟に廊下に
飛びだしていた。
体と口が勝手に動いた。
コウショウ「おい、やめろよ!」
アンナ「・・・戸部?」
マナ「・・・?」
自分でも、驚いた。
いつもは傍観者なのに、
口を挟んでいるなんて。
コウショウ「安村さんは・・・
悪くない。
知らない人にいきなり
話しかけられて、
戸惑って逃げることの
何が悪いんだ?」
マナ「いや・・・別に
戸惑ってはないんだけど」
安村さんに構わず、
僕は続ける。
コウショウ「白井は、安村さんが
羨ましいんだろ?
前までは皆、白井に
スポットを当てていたのに、
急に安村さんを
注目するようになった。
だから白井は・・・」
アンナ「やめてよ!」
マナ「そうだよ、
もういいから・・・」
安村さんにまで
止められて、
僕は口をつぐんだ。
「行こっ、アンナ」
アンナ「うん・・・」
去っていく足音が
聞こえなくなって、
僕は息を吐いた。
マナ「助けてくれなくても
よかったのに」
コウショウ「え?」
マナ「だって、
どの学校でも
こんなことあるから。
もう慣れっこ」
コウショウ「・・・ずっと
転校を繰り返してるの?」
マナ「うん。色々・・・
トラブルとかが多くて」
コウショウ「そうなんだ・・・」
マナ「でも・・・
さっきはありがとう」
初めてみた、
安村さんの素の笑顔。
一瞬、胸が
ドキンと音をたてた。
すると、
後ろから声がした。
アンナ「あ、あの・・・」
コウショウ「白井?」
さっきとは
表情が全く違う。
一体どうしたと
いうのだろうか?
アンナ「安村さん・・・
ごめんなさい!」
マナ「え・・・」
アンナ「戸部に言われて、
気づいたんだ。
私、あなたが羨ましくて、
嫉妬したんだと思う。
でも・・・こんなの
おかしいって・・・
さっき皆にも言ってきた。
もう辞めようって。
あんなこと・・・
絶対許されないけど、
本当ごめんなさい」
泣きそうになりながら、
白井が必死に頭を下げる。
安村さんが、そっと
白井の肩に手を置いた。
マナ「ありがとう、
もういいよ。
あなたの気持ち、
十分伝わった。
皆を止めるのも、
きっと勇気が必要だったよね。
私こそ、ごめんなさい」
アンナ「安村さん・・・」
顔を上げた白井が、
安村さんに
おずおずと聞いた。
アンナ「あの・・・
嫌だったら、いいんです・・・
あの・・・私と、友達に
なってくれませんか?」
マナ「・・・偶然。
私も、同じこと考えてた」
アンナ「安村さん・・・本当?」
マナ「うん、本当。
安村さん、
じゃなくて、
マナでいいよ?」
アンナ「やす・・・じゃなくて、
マナ!
私も、アンナって呼んで?」
マナ「うん、アンナ。
ふふっ・・・
なんだか久しぶりだな、
この感じ」
アンナ「マナ、私、
中学生としてのマナも、
芸能人としてのマナも、
大好き!」
肩をつつきあって
笑っている2人。
なんだか僕まで
嬉しくなった。
アンナ「戸部も、
ありがとう」
コウショウ「え、あ、うん」
いきなり感謝の言葉を
伝えられて、
戸惑ってしまう僕だった。
*・*・・・*・・・*・*
数日後の放課後、
帰り支度をしていると、
白井が声をかけてきた。
アンナ「ねぇ、戸部って暇?」
コウショウ「え?
うん、暇だけど」
すると、白井は
いたずらっぽい笑みを
浮かべて
小声でささやいた。
アンナ「マナに、
メッセージカード
作らない?」
コウショウ「メッセージカード??」
アンナ「うん、マナ、
誕生日が
先月だったみたいなの。
サプライズで
プレゼントしようよ」
言うが早いが、
白井は僕の机に
カラフルなペンや
折り紙などを置いた。
ヨシト「ん?
お前ら、帰らないのか?」
学級委員長の仕事で
見回りに来た野口が、
白井の手元を見て驚く。
ヨシト「へ?!
手がこんでるな。
俺もやっていい?」
アンナ「いいよ!
今日中に完成させたいんだ、
マナがいないうちにね」
安村は、今日は午後から
仕事があるみたいで、
早退した。
コウショウ「忙しいんだなぁ、
芸能人って」
ヨシト「そりゃそうだろ。
ドラマにラジオに、
安村は息をつく暇がないんだ」
アンナ「そうね?」
コウショウ「・・・え?
なんでそんなに詳しいの?
もしかして、
熱烈なファンとか?」
からかうつもりで言ったのに、
2人は大きく目を見開いた。
コウショウ「え? え? なに?」
アンナ「あんた・・・嘘でしょ」
ヨシト「安村のこと
知らない人なんて、
いるわけないだろ?」
・・・ここにいます。
ヨシト「その反応は・・・
マジか」
コウショウ「うん。マジ」
アンナ「しょうがない。
私が説明してあげる!」
白井の説明によると、
安村さんは
3人組ボーカルユニット
『ニコラル』の1人として
デビューしたらしい。
今ではモデルや女優としても
活躍している
人気アーティストなのだそう。
アンナ「ニコラルの中でも、
マナはクール担当。
歌唱力は半端ない!
リードボーカルをしたり
ソロ曲を出したりしてるの」
コウショウ「へ?、
随分と詳し・・・」
アンナ「これ、
常識だから!!」
ヨシト「まあまあ(笑)」
メッセージカードが完成して、
3人で帰ることになった。
アンナ「明日マナを呼び出して、
3人で渡そう!」
ヨシト「そうだな。
コウショウ、
お前寝坊するなよ?」
コウショウ「しないよ(笑)」
それよりも、
野口が僕のことを
下の名前で呼んだのが
気になった。
コウショウ「白井と野口こそ、
遅刻するなよな」
2人の肩を叩くと、2人が
おんなじ顔をしたから驚く。
コウショウ「え。なに?」
アンナ「何、名字で
呼んでくれてるの。
コウショウって堅苦しい」
ヨシト「そうだよ。
俺らもうさ、下の名前で
良いんじゃね?」
誰かを下の名前で
呼ぶなんて、
もう一生ないことだと
思っていた。
アンナ「コウショウ?」
コウショウ「・・・さ、早く帰ろう!
ヨシトもアンナも、
気をつけて帰れよ。
じゃあ!」
大きく手を振って、
2人と別れた。
それにしても、
誰かとこんな風に
話したことは、
初めてだ。
案外、楽しいのかも
しれないな。
*・*・・・*・・・*・*
次の日、僕らは安村さんに
メッセージカードを
プレゼントした。
安村さんは、
泣き笑いのような
笑顔を見せた。
マナ「アンナ、
コウショウ、
ありがとう・・・」
いつの間にか、
安村さ・・・マナも
僕をコウショウと
呼び始めている。
ヨシトは、遅刻した。
許さない。
それから、4人で
過ごす時間は、
どんどん増えていった。
文化祭では
一緒に回った。
マナ「ねぇ、あの2人、
ずっとついてきてる気が
するんだけど・・・?」
コウショウ「え? 誰?」
マナは、少し離れた所にいる
一般人男性の2人組が
気になるようだった。
アンナ「ん?
ちょっと見てくる」
敵に回すと怖いアンナが、
さり気なく見に行ったあと、
鬼のような形相で帰ってきた。
アンナ「あの人達、
マナのおっかけだよ!
リュックにニコラルの
キーホルダーつけてたし。
多分、マナに
気づいてるっぽい」
マナ「え。どうしよ・・・」
コウショウ「うーん・・・
逃げても追いかけて
きそうだしな・・・」
ヨシト「・・・よし、
俺に任せろ!」
コ・マ・ア「え?」
しばらくすると、
2人組が近づいてきた。
マナと目を合わせて、
頷く。
「あの?、 もしかして、
ニコラルの
マナちゃんですか!?」
「握手、してください!!」
長い髪を払い、
振り返ったのは・・・
ヨシト「はぁい?
私がマナよ?
いつも応援ありがとう!」
女装したヨシトだった。
マナ「私のモノマネ?
最悪(笑)」
逃げながらマナが笑う。
「うわ!!
だ、誰だ、お前ー!!」
アンナ「誰って・・・
あなたたちが探してる
マナですよ?」
「俺が知ってる
マナちゃんは、
こんなんじゃない」
ヨシト「”こんなん”言うなや」
人目の付かない場所まで
逃げて、ふぅっと
息を吐いた。
コウショウ「なんとか免れたな。
これからどうする?」
マナ「せっかくだし、
2人で回ろうよ!」
マナが僕の手をとる。
・・・本当、マナには
いつもドキドキさせられる。
いろんな意味で。
マナの芸能活動も、
順調だった。
週一で放送される、
ニコラルのラジオ
『ニコニコチャンネル』を、
僕は毎週聴いていた。
サキ「こんばんは!
ニコラルのガーリー担当
濱尾サキと!」
マナ「クール担当
安村マナと、」
アム「ダンス担当
深尾アムです!」
サキ「今日もたくさんの
メッセージ
ありがとうございます!
では、まずはラジオネーム
『ニコラルlove』さん。
“最近、マナちゃんが
すごく明るくなった気がします!
クールなのに、笑顔も増えて
ギャップ萌してます(笑)”
だそうです!」
アム「分かる!
私も思ってたー!
最近いいことあったの?」
マナ「えー、そうかな?
でも、毎日が楽しいです」
サキ「学校の話とかも
いっぱいしてくるよね。
ねえ聞いて! って(笑)」
マナ「あー、もう・・・
クールなキャラが
崩れちゃう(笑)」
きっと、もしかしたら、
僕達が影響してるのかもしれない。
そうであって欲しい。
マナの笑顔を、
もっとずっと見ていたい。
僕は、マナのことが
好きになっていた。
初めての、誰かを
好きになる気持ち。
アンナに
追及されるまでは、
気づかなかった。
アンナ「ねえ、
コウショウって、
マナのこと好きでしょ?」
コウショウ「え!?
いきなり何言うんだよ」
アンナ「絶対、
ぜぇったいそうだよ!
マナいないし、
言っちゃいなよ」
最近はマナの人気が
どんどん上がっていて、
早退や欠席する日が増えた。
コウショウ「わからないんだ。
相手は芸能人だし、
叶うわけがないのに。
マナを思うだけで、
胸が苦しい。辛いんだ」
アンナ「ふーん、
それで、
諦めちゃうわけ?」
コウショウ「え・・・?」
アンナ「確かにマナは、
芸能人だよ?
でもさ、マナだって
普通の中学生。
本当は無邪気で
抜けてるところもあって、
皆と一緒に授業うけて、
数学の平方根の計算に
頭を抱えて・・・
住む世界は私達と同じだって、
今日までで気づいたんじゃない?」
コウショウ「アンナ・・・」
アンナ「私も最初は、悩んだよ。
マナと釣り合ってないって。
でも、マナもそういう扱いを
されるの好きじゃなさそうだし、
私はマナと友達でいるって
決めたから。
・・・コウショウは?
それでもマナのこと、
諦めるの?」
アンナは、本当に
マナのことが好きなんだ。
僕だって、そう。
クールなふりして、
本当は弱くてほっとけない。
甘え上手なところがあって、
だけどあとでジュースを
奢ってくれたり、
気配りもしっかりできる。
芸能人の安村マナは、
キラキラ輝いていて、
好きだ。
・・・でも、マナの
ちょっぴり不器用なところも、
わがままなところも、
全て含めて好きなんだ。
コウショウ「アンナ、
ありがとう。
僕、頑張ってみるよ」
アンナ「うん!
応援してる!」
*・*・・・*・・・*・*
悩みに悩んだ末、
告白することにした。
ある日の放課後、
マナを誰もいない教室に
呼び出した。
話したいことがある、と
LINEしたら、
マナから
“私も話したいことがあるんだ”
と返信が来た。
季節は冬になり、
日が短くなって、
教室がオレンジ色に染まる。
マナがゆっくりと
教室に入ってきた。
マナ「話ってなに?
そちらからどーぞ」
軽い口調で、
少し安心した。
コウショウ「あのさ、
僕・・・
マナが好きなんだ」
マナは、少し
驚いた顔をしたあと、
優しく微笑んだ。
マナ「いつも
応援ありがとう」
コウショウ「っそうじゃなくて!
もちろん、芸能人の
マナのことも応援してるし、
好きだけど・・・
そのままのマナっていうか・・・
うまく言えないけど、
とにかくマナの全部が
好きなんだ!」
マナ「・・・もう、分かった。
恥ずかしいから、やめて」
頬を紅くしたマナが、
下を向く。
マナ「コウショウってさ・・・
私の初めてのソロ曲
知ってる?」
コウショウ「え?」
いきなりの質問に
戸惑う。
マナ「知らなかったら、
調べてほしいな。
今日収録する
ニコニコチャンネルで
その曲を取り上げるの。
楽しみにしててね」
マナは僕に背を向けて、
速足で去っていった。
コウショウ「え・・・マナ?」
告白の返事は?
話したかったことって?
マナがなんだか変だ。
家に帰り、マナの
初ソロ曲を調べた僕は、
絶句した。
僕は急いで
ニコニコチャンネルへの
メッセージを作って送信した。
サキ「皆さんこんばんはー!
今日のテーマは、マナの初ソロ曲
『Moonlight』についてです!
まずは、この曲に
込められた思いを、
マナに説明してもらいましょう!」
マナ「・・・」
アム「おーい、マナー?」
マナ「あ! ごめんなさい、
私の番でした(笑)」
・・・やっぱり、
何かおかしい。
もしかして、
僕が告白なんかして
しまったからだろうか?
罪悪感でいっぱいに
なりながら、
マナの説明を聞いた。
マナ「私は実は、
当時スランプに陥っていて。
そのときにこの曲のデモを聴いて、
自分が歌っていいのかと
思ってしまうくらい、
感動しました。
特に、”君はひとりじゃない。
だから間違えないで”
という歌詞は、歌いながら
泣きそうになってしまって」
僕も。
僕も、その歌詞に
救われた。
マナ「もし当時の私のように
悩んでる人がこの曲を聴いて、
少しでも笑顔になれたり
前向きになれたりしたら、
私はそれ以上の幸せはないと
思っています」
サキ「うん、
私もこの曲を聴いて、
元気になれました」
アム「マナの声が
また良いんだよね~。
泣かせに来てる」
マナ「アハハハ(笑)」
サキ「それでは聴いてください。
安村マナで、
『Moonlight』」
ピアノのメロディが
流れ出す。
あの日と変わらない、
マナの歌声。
アム「メッセージを
紹介しましょう。
ラジオネーム
『ライトフライト』さん」
マナ「”僕は、マナさんの
Moonlightに救われました。
マナさんと出逢って・・・」
マナが鼻をすすった。
僕も、鼻の奥が
ツンとする。
マナ「”マナさんと出逢って、
僕は、生まれて初めて、
生きたいと強く思いました。
あの時の僕を、
叱ってやりたいです。
マナさんのおかげで・・・
僕はふざけあえる友達が出来て、
誰かを好きになることを学びました”」
マナの声がこもる。
サキさんとアムさんが、
小声で、頑張れ、と
呟いている。
マナ「”マナさんに、
いつも感謝しています。
マナさんがいなかったら、
過ぎていく毎日をこんなにも
前向きに受け入れることが
出来ませんでした。
いつも応援してます。
これからも頑張ってください!
・・・大好きです”」
すっかりグズグズの
涙声になったマナ。
僕も涙が止まらなかった。
あの日、
僕が命を絶とうとした夜、
ラジオから流れたのは
Moonlightだった。
僕を救ってくれたのは、
マナの歌声だった。
僕をいつも
支えてくれるのは、
マナだった。
アム「マナ・・・」
マナ「ごめんなさい・・・
ライトフライトさん、
ありがとう・・・
私もきっと、
あなたに救われました。
本当、嬉しいです」
俺だって・・・
感謝してもしきれない。
明日、もう一度マナに
気持ちを伝えよう。
・・・しかし、その日から、
マナが僕の前に
姿を見せることはなかった。
*・*・・・*・・・*・*
春。
桜はもう
散り始めている。
アンナ、ヨシト、
そして僕。
3人は別々の高校へ
進学してからも、
連絡を取り合い、
遊んでいる。
アンナ「マナ・・・
笑ってるね」
駅前ビルの
大型ビジョンに映された、
マナの笑顔。
アナウンサー「今回Moonlightを
再収録されるということですが、
なぜそのような意向と
なったのですか?」
マナ「ある人との
出会いがきっかけです。
その人は、いつも私を
救ってくれました。
いつか恩返ししたい、
と思っていました。
ですが、私はその人とは
別の学校に進学しました」
マナはあの日、
僕に転校することを
告げたかった。
有名な芸能人学校。
だけど僕が先に
気持ちを伝えてしまったせいで、
言い出せなかったのだ。
マナ「その人には直接想いを
伝えられなかった。
そのことをずっと後悔してます。
私は、Moonlightを聴いた人に、
誰かにちゃんと想いを伝える
勇気を与えたいなと思いました。
私の持っている力は
ほんの僅かに過ぎないけれど、
背中を押したくて」
ヨシト「その人、って、
コウショウのことだよな?」
眩しいように笑う
ヨシト。
アナウンサー「その人、
今見てるかもしれませんよ?
想いを伝えてみたら
どうですか?」
マナ「そうですね。
・・・私と友達、いや、
親友になってくれた人、
サプライズのプレゼントを
渡す時に遅刻して来た人(笑)、
2人のことが大好きです。
でも、もっともっと
大好きな人がいます」
コウショウ「マナ・・・」
マナ「・・・ライトフライトさん。
あなたのことを忘れません。
私はあなたにいつも
支えてもらってばかりで・・・
でも、あなたも私に救われていた
ということを知って、
本当に嬉しかった。
Moonlight聴いてね(笑)
大好きです!!」
どうやらマナは、
僕がライトフライトだということに
気づいていたらしい。
やっと今、あの日の返事を
聞くことができて、
思わず目の前が歪んだ。
2人にばれないように、
涙を拭った。
その2人はというと・・・
ヨシト「やっべー、俺、
マナちゃんに大好きですって
言われた!
俺のこと覚えてくれてるとか、
まじで感激!」
アンナ「遅刻した人って
覚えられてるけどね?(笑)」
幼稚な言い合いを
していた。
ヨシト「俺ら、マナちゃんと
出会ってから
変わったよな」
アンナ「うん。
コウショウなんか特に」
コウショウ「確かに(笑)
マナはすごいよな」
ヨシト「・・・でも、
お前もマナちゃんを
変えたんだよ」
コウショウ「・・・僕が?」
アンナ「うん。
コウショウに会えなかったら、
私達ずっと言葉を交わさないまま
卒業してたんだろうね。
私なんか、あのままひねくれて
受験失敗してたかも」
ヨシト「俺も、コウショウと
友達になれて良かった。
ありがとうな」
コウショウ「そんな、
こちらこそだよ。
これからも、よろしくな」
誰かに救われた。
自分が変わった。
でも、気づかないうちに
誰かを支えて、
その人を変えていた。
人と人との繋がりは、
複雑だけど
不思議とあたたかい。
それを彼女が
教えてくれた。
春の風が、
心地よく吹いていた。
*end*
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